下向きに電流が流れる銅線が、ちょうど O の字を通って厚紙を突き抜け、その周りの厚紙に磁界の強さを示す三つの輪が広がって、その上を破線が流れていく。二本の矢印が輪に沿って導線の周りを回り、真ん中の輪は光を帯びて呼吸し、右の目盛りのスライダーは 0.2 エルステッドまで上がる。一アンペアの電流が一センチの距離でつくる値である。
単位シート
磁界の強さ · CGS 第 1/1 葉 · 改訂 2026-09エルステッド Oe · oersted
SI 外の単位 · 量:磁界の強さ;CGS 単位、1 Oe = 1000/4π A/m
講義中に震えた針
1820 年の春、ハンス・クリスティアン・エルステッドはコペンハーゲンでガルヴァーニ電気についての夜の講義をしていて、ボルタの電堆の回路を閉じたとき、導線のそばに置いた方位磁針が向きを変えたことに気づいた。聴衆は特に何も見なかった。針はかすかに震えただけだった。だがその夏、エルステッドはより強い電池で実験を繰り返し、ヨーロッパ中に短いラテン語の報告を送った。導線を流れる電流はその周りに磁気的な作用を生み、その作用は導線に向かうのでも離れるのでもなく、円を描いている、と。
百十年後、エルステッドの名は CGS 系の磁界の強さの単位に与えられた。導線の周りが空気でも鉄でも真空でも、電流がつくり出すまさにその量である。
このページでは、コイルの同じエルステッドが鉄心によってまったく違うガウスの数になること、SI への換算でなぜ四つの π が現れるのか、そしてエルステッドがなぜ今も磁石の仕様書に生きているのかを示す。
記号 Oe は大文字の O と小文字の e で書く。エルステッドの姓に由来するからで、単位の名前は小文字で書く:oersted、kilooersted。デンマーク文字 ø は記号には入らないので、単位はどの言語でも同じ姿になる。
エルステッドが測るのは磁界の強さ H、つまり電流がつくるもので、ガウスが測るのは磁束密度 B、つまり物質の中で生じたものだ。真空では数値が一致するが、鋼の鉄心の中ではもう一エルステッドが数千ガウスになり、一方を他方の代わりに使うことはできない。
01 · 定義
アンペア毎メートル · ギルバート · ガウスエルステッドは電磁 CGS 系における磁界の強さの単位で、経路一センチあたり一ギルバートの起磁力がこの強さをつくる。SI に換算すると千を四 π で割ったアンペア毎メートル、つまり約 79.6 A/m になる。
磁界の強さは電流がつくるとおりの場を表し、物質には左右されない。一センチあたり十巻きで一アンペアを流したコイルは、中が空気でも鋼でも、内部に約十二・五エルステッドをつくる。一方、この強さが生む磁束密度は物質に大きく左右される。鉄は磁化して自分の場を加えるので、B = H + 4πM となる。
エルステッドを SI に換算するときの四つの π は、CGS 系がどう組み立てられたかの名残である。そこでは磁極のクーロンの法則が係数なしで書かれ、場の球面幾何は電流の方程式に移った。一方 SI はそれをマクスウェル方程式から単位の定義へと移した。
同じエルステッド、違うガウス
左は一センチあたり十巻きのコイルで、選んだ鉄心が入っている。銅を流れる電流が磁界の強さ H を決め、鉄心の中の紫の線の数と速さが、生じた磁束密度 B を示す。右は五つの材料すべての磁化曲線で、H は対数目盛り。明るい線が選んだ材料、光る点が現在の状態、底の細い線が真空で、そこでは B が数値の上で H に等しい。
なぜ磁界の強さは場ではなく電流から求めるのか
どんな閉じた経路でも導線の周りを一周し、その道に沿って磁界の強さを足し合わせると、経路が囲む電流に一定の係数を掛けたものが得られ、それ以外は何も入らない。鉄心も空気もこの和には入らない。だから技術者はコイルの磁界の強さを巻数とアンペアから直接計算し、磁束密度はそのあと材料の曲線から読み取る。エルステッドとガウスが二つの別の量に振り分けられて守っているのは、まさにこの二段階の論理である。
02 · 換算
単位 · 場とコイル · 保磁力エルステッドからアンペア毎メートルへ
任意の単位で磁界の強さを入力すると、このページはそれをエルステッドとアンペア毎メートルで表し、どんな電流やコイルがそれをつくるかを示し、材料の保磁力、つまり物質を消磁するのに必要な磁界の強さと比べる。どのタブでも磁界の強さは同じである。
覚えておくきまり:一エルステッドはほぼ八十アンペア毎メートル、一キロアンペア毎メートルは十二・五エルステッドを少し上回る。
磁石には二つの保磁力がある。B が消える磁束密度の保磁力 Hcb と、磁化そのものが消える固有保磁力 Hcj で、ネオジム磁石では後者が前者の二倍になることもある。仕様書を比べるときは、どちらが書かれているかを確かめたい。
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04 · 測定器
針 · ヘルムホルツ · ループ · クランプエルステッドのつくり方と読み方
方位磁針の上の導線
導線を南から北へ、針のすぐ上に張り、電流を流すと針は横向きに回る。導線を針の下に移すか電流の向きを逆にするだけで、針は反対側に回る。この単純な実験から数週間のうちにシュヴァイガーの倍率器、つまり最初の検流計が生まれ、のちには正接検流計が生まれた。そこでは針の振れ角が電流の強さとして読まれた。
寸法から計算される磁界の強さ
同じ二つのコイルを半径と等しい距離だけ離すと、その間の広い範囲にほぼ一様な場ができ、その強さは巻数、電流、半径から一切の調整なしに計算できる。だからヘルムホルツコイルは場の基準として使われる。その中でセンサーを校正し、地磁気を打ち消し、試験方法が求めるとおりのエルステッドを正確に設定する。
二つの名前がともに暮らすループ
試料には二つの巻線を巻く。一つ目に交流電流を流してそこからエルステッド単位の磁界の強さを計算し、二つ目から誘導電圧を取り出してガウス単位の磁束密度に積分する。点がヒステリシスループをたどり、設計者はそこから必要なものをすべて読み取る。ループが B 軸と交わる所が残留磁束密度、H 軸と交わる所が保磁力である。
一周して見つけた電流
クランプメーターは鉄心の輪で導線を囲み、アンペールの法則に従って一周全体の磁界の強さを足し合わせるので、表示は導線が輪の中のどこにあるかに左右されない。これはエルステッドの実験の直接の遺産である。回路を切らずに、電流が自分の周りにつくる磁界の強さの円だけから電流がわかる。
05 · 表記の規則
記号 · H と B · 磁石の仕様書保磁力はガウスではなくエルステッドで
エルステッドは磁界の強さにだけ、ガウスは磁束密度にだけ使い、エルステッドを SI に換算するときは千割る四 π の係数を忘れない。
右の一行目は磁界の強さを磁束密度の単位で測り、二行目は八十という係数を落とし、三行目は電流をアブアンペアで表す絶対系の式を持ち込んで十倍間違える。四行目はメガガウス・エルステッドの代わりに存在しない単位をつくり、五行目は記号の大文字小文字を崩し、六行目は真空でしか成り立たない等式を、磁束密度が何千倍にもなる鉄心に持ち込んでいる。
06 · 隣り合う単位
アンペア毎メートル · ガウス · ギルバートエルステッドには三つの隣人がいる。SI で同じ磁界の強さを測るアンペア毎メートル、真空で一致するガウス、そして経路一センチで割るとエルステッドになる起磁力、ギルバートだ。
SI の磁界の強さ。ついに固有の名前をもたなかった。
CGS の磁束密度。真空ではエルステッドとガウスは同じ数で表される。
CGS の起磁力。一センチあたり一ギルバートがエルステッドである。
07 · 歴史の部
資料 · コペンハーゲンから SI へ磁界の強さはどうして名前を得て、また失ったか
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消磁には何エルステッド必要か
各柱の高さは、その時代の典型的な磁石の保磁力 Hcb を 10 から 20 000 Oe の対数目盛りで表したもの。焼入れ鋼、アルニコ、フェライト、サマリウムコバルト、ネオジム。枠が世代を順にたどる。八十年で磁石の強さはほぼ二百倍になった。
メーカーは今もこれらの数値をキロエルステッドで印刷しており、この業界でエルステッドはどこよりも確かに生きている。
名前のないまま残った量
SI のほとんどすべての電磁気量には固有の名前がある。ボルト、オーム、ウェーバ、テスラ、ヘンリー。磁界の強さはこの列に入らず、アンペア毎メートルのままだった。CGS 系では独自の名前があったにもかかわらずである。これは手抜きではなく、SI の成り立ちの直接の結果だ。SI ではアンペアが基本単位であり、意味の上では経路の長さあたりの電流である磁界の強さは、仲介なしにそれで表せる。
一方エルステッドは、基本となる電気の単位がまったくない体系に生きていて、そこでは磁界の強さにそれより短い書き方がなかった。1960 年に CGS 系が捨てられると名前は余計なものになったが、何十年もエルステッドで数えてきた永久磁石の業界が、ガウスとともにそれを残した。今ではネオジム磁石の仕様書のほとんどが両方の体系で同時に印刷されている。
二つの書き方を和解させるのは簡単な係数だ。一キロアンペア毎メートルは 12.566 エルステッドで、メーカーはとうにそれを表に載せているので、買い手は四つの π を思い出さなくてよい。