分
SI 以外の単位で SI と併用が認められるもの · 量: 時間
時計は三百年のあいだ分針なしで立っていた。最初の塔の機械は時だけを打ち、それで誰も困らなかった。日常には、それより細かく測らねばならないものが何もなかったのである。
01 · 定義
分は SI 以外の時間の単位で、六十秒に等しい。秒はセシウム原子の遷移の周波数によって定義されるが、分は単にその秒を通じて定義され、自前の物理を持たない。何を都合のよい一まとまりとみなすかという、純粋な取り決めである。
六十はバビロンの書記から受け継いだもので、その約数のおかげで残った。六十は二、三、四、五、六、十、十二、十五、二十、三十で割り切れる。一時間を三等分できるのはこの体系だけで、十進法では無限小数になる。ほかの度量衡改革が勝ったところで、時間を十進法に移す試みが崩れたのはまさにこのためだった。
分にはほかのどの単位にもない特徴がある。長さが一定でないのだ。協定世界時の目盛にうるう秒が挿入されると、その日の最後の一分は六十一秒続く。1972 年以来これは二十七回起きており、2035 年には挿入が終わる。地球が均一に回りはじめたからではなく、その余分な一秒がデジタル機器にとって、惑星の自転とのずれよりも高くつくからである。
分に接頭語は用いない。ミリ分やキロ分というものは存在しない。より短い区間には接頭語つきの秒へ移り、より長い区間には時と日へ移る。この点で分は、接頭語を進んで受け入れるバールや電子ボルトのような単位とは異なる。
文字盤は六十等分ではなく、あなたが設定した数だけに分けられる。深紅の扇形は出来事の長さ、黄色い印は時間の目盛である。同じ長さがどのように違う書き方を得るか、どの目盛が丸い数を生むかを見てほしい。
二十分はちょうど一時間の三分の一であり、六十進の数え方が度量衡改革を生き延びた理由はこれ一つに尽きる。百の三分の一は 33.33… であり、無限小数の上に時刻表は組めない。
02 · 換算
値を入力すると、このシートが換算します
分は定義により、秒・時・日へ正確に換算される。不正確になるのは地球の自転との比較だけだ。恒星分は我々の分より 0.164 秒短く、一日でその差は四分近くになる。
別行に立つのが 1795 年の十進分 — 86.4 秒である。フランスで合法的に十七か月間存在した。
1972 年以来二十七回、その日の最後の一分は六十一秒続いた。挿入は半年前に告知されるが、それでも毎回サーバの一部を倒す。2012 年にはこの追加の一秒で航空会社の予約システムと大手サイトのいくつかが止まった。2035 年から挿入は廃止され、地球の自転とのずれは溜まるにまかせられる。日付が目盛から遅れていくことになるが、そのほうが害が小さいと判断された。
| 注記 | |||
|---|---|---|---|
| {u} | {name} | {value} | {note} |
03 · 桁の並び
対数目盛: 閃光から千年紀まで04 · 測定器
分は何で計るか
一回分だけの器具である。ひっくり返せば一分が走りだす。海では砂時計が三十分ごとの鐘を刻み、その正確さは砂の乾き具合に左右された。湿った天気ではガラスは遅れた。
ホイヘンス、1656 年。一日の誤差が十五分から十秒へ落ち、分針がはじめて意味を持つ。秒針が現れるのはさらに後、脱進機の精度がそれに追いついてからである。
始動と停止のできる秒針。分は文字盤の上の区間であることをやめ、測定できる間隔になった。それが分を、スポーツと医療と工場の道具にした。
分そのものは数えない。秒を再現し、分は六十を掛けて得られる。噴水型標準の歩度は三億年に一秒ほどなので、分は日常では誰も必要としない精度を受け継ぐことになる。
05 · 表記の規則
接頭語を受け付けず、ピリオドも要らない
記号は小文字のラテン文字三つで、ピリオドは付けない。数値と記号の間には空白を置き、しかも改行で切れないものを置く。値が行末で分断されないためである。
技術文書では、時刻ではなく所要時間を指すのであれば、八十分を一つの数で書いてもよい。文字盤では同じ量を 1 h 20 min と書かねばならない。
06 · 隣り合う単位
分は秒と時のあいだに立ち、両方に六十という係数で結ばれている。同じ語は幾何学では度の六十分の一を指す。この二つの目盛は同名なのではなく、血縁である。
六十進の分割は時間にも角度にも等しく及ぶ。これは偶然ではない。どちらの目盛もバビロニアの天文学から来ており、そこでは空が暦と同じ単位で測られていた。
07 · 歴史の部
六十分の一はどうやって文字盤にたどり着いたか
プトレマイオスはバビロニアの数表に従い、度と時を六十等分する。ラテン語訳の「第一の小さくされた部分」が minuta という語を生み、第二の分割が secunda を生んだ。我々の秒はここから来ている。
ヨスト・ビュルギは天文学者ティコ・ブラーエのために分針つきの時計を作る。注文によるものであって、街のためではない。その後も百年、分針は天文台の道具であり続け、日用品にはならなかった。
法令が一日十時間、一時間百分の暦をもたらす。分は 86.4 秒になった。時計職人は十進と従来の二重の目盛を持つ文字盤を出したが、人々は従来のほうを読み続けた。
協定世界時の目盛は、地球の自転から離れないように秒を挿入する権利を得る。こうして六十一秒の分が生まれた。長さが永久に固定されていない唯一の単位である。
十進改革が負けた唯一の量
度量衡は長さ・質量・面積、さらには角度までも十進に移した。四分円を百等分するグラードは今も測量で使われている。持ちこたえたのは時間だけで、その理由は算術的だ。百分の時は三で割り切れず、三分の一時間はどんな時刻表にも最も多く現れる一まとまりだからである。
計量学的には分は秒からの導出で、自前の標準を持たない。そのかわり、この系列で唯一、長さが固定されていない単位でもある。うるう秒が挿入されるとその日の最後の一分は六十一秒であり、それは測定誤差ではなく正当な値である。
カタログ · 測定単位
それぞれの量に一つの要覧
SI 基本単位七つ、固有の名前を持つ組立単位二十二、そして技術にも日常にも欠かせない SI 以外の単位。それぞれに一枚のシートがある。定義、換算、器具、表記の規則、歴史。36 言語で。