気圧
atm — SI 以外の単位・量:圧力・ちょうど 101 325 Pa
フィレンツェの井戸職人たちは、どれほど工夫しても、どの喞筒も水を十メートル半より高くは汲み上げられないと嘆いていた。ガリレオは、自然もそろそろ真空への恐れを切らしたらしい、と冗談を言った。弟子のトリチェリはこれを本気で確かめようと、水を水銀に置き換えた。水銀は十四倍重いから柱は短くなり、机の上にも収まる。密封した管の中の水銀は七十六センチメートルで止まり、その上には本来あってはならない空白が残った。つまり喞筒は何も吸っていない。水を管へ押し込むのは空気であり、しかもこの柱が釣り合わせられるだけの力でちょうど押している。われわれは空気の海の底に沈んで暮らしている、とトリチェリは書いた。
01・定義
気圧は SI 以外の圧力の単位で、ちょうど 101 325 パスカルに等しい。この数値は測定されたものではなく定められたものである。0 °C・標準重力加速度のもとでの高さ 760 mm の水銀柱の圧力を一度だけ計算し、1954年から定義として固定した。
論理に何が起きたかに注目したい。はじめ単位は物であった。注ぐことができ、定規で測れ、目で見える水銀の柱である。次にその物を水銀の密度と重力から計算し、五桁の数値を得て、その数値自体を単位と宣言した。以後、水銀は不要になった。明日その密度がもう少し正確に分かったとしても、気圧は微動だにしない。もはや水銀の話ではないからである。
この単位で紛らわしいのは名前の後半だけである。「標準」大気圧は、窓の外で何が起きているかについては何も語らない。地表の実際の圧力は、台風の目の 870 ヘクトパスカルから冬のシベリア上空の 1085 まで揺れ動き、ちょうど一気圧になるのは、厳密に言えば偶然にすぎない。これは基準点であって測定ではない。気体の体積はこれに換算され、沸点はここから数えられ、圧力計はこれで目盛られる。そして習慣で「常圧」と呼ばれるが、自然界に常圧なるものは存在しない。
固定されたこの数値から、この一枚の算術がすべて導かれる。気圧は水銀柱ミリメートルのちょうど 760 倍、バールの 1.013 25 倍、そして工学気圧の 1.033 倍である。工学気圧とは例の「at」、すなわち重量キログラム毎平方センチメートルで、今なお本物と取り違えられている。両者の差は三パーセント。計算を台無しにするには十分で、圧力計の目盛で気づくには小さすぎる。
一気圧とは、一平方メートルごとに載っている十トン三百三十キログラムの空気である。大人の肩には六百キログラムほど、手のひらには百五十キログラムほど。それでも押し潰されないのは、外からも内からも同じように押しているからだ。だが片側からその半分を取り除けば、差はたちまち十分に感じられる力になる。吸盤も、ストローも、ガラス用の真空吸着リフトも、息を吸うときの胸郭も、原理は同じである。片側の圧力をわずかに下げ、あとは大気に働かせればよい。
02・換算
値を入力すると、このシートが他の単位へ換算します
三つの系統:圧力の目盛そのもの、その圧力のもとにある身近な物、そして大気が定める標準状態。
最大の落とし穴は係数ではなく、どこから数えるかにある。家庭用の圧力計——タイヤ用、コンプレッサー用、針のあるものはどれも——が示すのはゲージ圧、すなわち周囲の空気との差である。「タイヤに二・五」とは絶対圧で三・五を意味する。気体の法則の式、沸点、溶解度はいずれも絶対圧を要求する。英語のカタログに psig と psia という二つの綴りがあるのはこのためであり、台無しになった計算の半分もここから来る。両者を取り違えることは、ちょうど一気圧ぶん誤ることであり、低い圧力では測っている量そのものより大きい。
| 表記 | 意味 | 値 | 使われる場所 |
|---|---|---|---|
| atm | 標準大気圧 | 1.0000 | 化学、潜水 |
| Pa | パスカル、SI の単位 | 101325 Pa | 規格と計算 |
| kPa | キロパスカル | 101.325 | タイヤ、SI での技術 |
| bar | bar | 1.01325 | 油圧、ダイビング |
| hPa | ヘクトパスカル、すなわちミリバール | 1013.3 | 天気予報 |
| mmHg | トル | 760.00 | 医学、真空技術 |
| at | 工学、kgf/cm² | 1.0332 | 古い文書 |
| psi | 重量ポンド毎平方インチ | 14.696 | 英米系の技術 |
| mmHg | 血圧 | 101325 Pa | 120 mm — 健常者の収縮期血圧 |
| bar | 乗用車のタイヤ | 101325 Pa | 計器で 2.5 bar |
| atm | スキューバのタンク | 101325 Pa | 鋼製ボンベで 200 気圧 |
| hPa | 天気予報 | 101325 Pa | 地表で 1013 hPa |
| atm | IUPAC の標準状態 | 101325 Pa | 1982年から 1 bar、それ以前は気圧 |
| kPa | 標準状態 | 101325 Pa | 101.325 kPa と 0 °C |
| mmHg | 気圧計の校正 | 101325 Pa | 0 °C・g₀ のもとで 760 mm |
換算はいずれも厳密である。これらの単位はすべて整数の係数でパスカルから定義されており、実験によって修正されるものは一つもない。表の中で唯一「生きた」数値はヘクトパスカルである。ミリバールと数値が一致するため、気象は観測者を再教育することも地図を描き直すこともなく単位を切り替えられた。
03・桁の眺め
圧力の常用対数、単位は気圧人が暮らす範囲と身近な技術
04・測定器
気圧を捉える道具
一メートルのガラス管の片端を封じ、水銀を満たして受け皿に伏せる。水銀は釣り合いの高さで止まるまで下がり、その上にはトリチェリの真空——人の手で作られた最初の真空——が残る。この器械は非の打ちどころなく正確で、しかもきわめて扱いにくい。重く、傾きに弱く、水銀の温度と土地の重力に対する補正を要する。その代わり校正は要らない。定規がそのまま目盛である。
同じ原理を計量学の水準まで高めたものである。受け皿の底は革袋で閉じられ、ねじで水銀面を毎回目盛のゼロ——象牙の尖端——に合わせる。尖端は水銀に映る自らの像にかろうじて触れなければならない。そのうえで柱の頂をバーニヤで、十分の一ミリメートルまで読む。この種の気圧計は二十世紀半ばまで校正台の圧力を定めるのに使われ、0 °C と標準重力に換算されたその読みからこそ、101 325 という数値が育った。
水銀の代わりに、空気を抜いた平たい波形の小箱を使う。圧力が上がればわずかに潰れ、下がれば伸びる。壁の動きは十分の一ミリメートル単位で、器械の妙はその動きを針の振れにまで拡大するてこ仕掛けにある。アネロイドは持ち運べ、落としても壊れにくく、玄関に掛けておける。ただし時とともに嘘をつく。ばねが疲れるので、水銀式と突き合わせねばならない。こうして同じ一つの量に「正しい」器械と「便利な」器械ができた。
電話機の中には砂粒ほどのシリコン膜が住んでいる。圧力を受けてたわみ、そのたわみとともに縁のひずみゲージの静電容量や抵抗が変わる。感度はおよそ十パスカル、つまり高さ一メートル未満であり、だから地図アプリは一階と三階を区別できる。世界の気圧計はいまや温度計より多く、何百万台もの電話から集めたその読みは、すでに天気予報のモデルに投入されている。
05・表記の規則
小文字三つと但し書き一つ
この単位は人名に由来しないため、記号は小文字で書き、接頭語は付けない。
大文字の「A」は輸入機器のカタログに現れるが、それは常に不注意の印であって、別の単位ではない。バールは気圧と 1.3 パーセント違い、パスカルの切りのよい数値を得るためにこそ導入された。気象では三十年代にすでに気圧を捨ててバールに移り、予報はミリバールと数値の等しいヘクトパスカルで出される。工学気圧「at」は重量キログラム毎平方センチメートルで、本物より三パーセント小さく、古い文書では atm より頻繁に現れる。右端の最後の行は、足りないものについてである。「絶対」または「ゲージ」の断りがなければ圧力の数値は不完全であり、これだけは省いてはならない唯一の但し書きである。
07・歴史の章
真空はいかにして単位になったか
実験そのものは一分で終わり、議論は二十年続いた。管の水銀の上には、当時の常識では存在しえない空白があったからである。トリチェリは一挙に説明した。柱を支えているのは空気の重さであり、その高さは一定ではない——日ごとに変わっていた。哲学論争のために考案された装置は、たちまち天気の予報者になった。気象学が真空から生まれた唯一の例である。
ブレーズ・パスカルはこう考えた。柱を支えているのが空気なら、山の上では空気が少なく、柱は下がるはずだ。彼自身は体が弱すぎたので、ピュイ・ド・ドームには義兄フロラン・ペリエが二本の管を携えて登った。一本は麓に残して修道士に見張らせ、もう一本を頂上へ運んだ。頂上で水銀は三インチと一ラインぶん下がった。論争は終わった。空気には重さがあり、登るほどその重さは小さくなる。
マクデブルク市長オットー・フォン・ゲーリケは、二つの銅の半球を合わせ、自作の喞筒で空気を抜き、馬車馬に引き離させようと持ちかけた。片側八頭ずつでも敵わなかった。直径半メートルで、大気は約二トンの力で球を押さえていたのである。面積に圧力を掛けられる者には計算は明らかだが、この見世物はどんな導出よりも巧みにそれを説明し、四世紀にわたって教科書に載り続けた。
二十世紀半ばになって厄介な事情が明らかになった。760 ミリメートルの水銀による定義は、水銀の密度と土地の重力を引きずっており、そのどちらも次々に精密化されていたのである。第十回国際度量衡総会はこの結び目を断ち切り、気圧を定義により 101 325 パスカルとした。単位は物質との結び付きを失い、単なる係数になった。のちにメートルが、続いてキログラムが物から切り離されたのと同じ手口である。
廃止されたのに消せなかった単位
気圧は SI に含まれず、使用も推奨されていない。圧力にはパスカルがあり、大きな値には接頭語がある。それでもこの単位は、数値そのものより窓の外の空気との比較が大事な場面で生き残っている。化学者が「3 atm での反応」と書くのは、大気圧の何倍かが本質的だからである。潜水士が深さを気圧で数えるのは、水深十メートルごとにちょうど一つ増えるからで、彼の仕事ではこれが最も扱いやすい。タイヤ用の圧力計がバールと atm の両方で目盛られているのは、両者の差が器械の誤差より小さいからである。計量学的な逆説はここにある。1954年以降、気圧は測定であることをやめ、厳密な係数になった。つまり、使うのに便利なものであり、同時に実験では検証しえないものになった。検証できるのは気圧計であって単位ではない。パスカルで校正された気圧計がちょうど一気圧を示すのは、まれな偶然のときだけである。その親族も似た運命をたどった。水銀柱ミリメートルもパスカルを通じて定義され、そして今も生きている——血圧を測る医学の場で。どんな勧告もそれを変えられなかった。
カタログ・測定単位
量ごとに一枚のシート
SI の基本単位七つ、固有の名を持つ組立単位二十二、そして技術にも暮らしにも欠かせない SI 以外の単位。どれにも一枚のシートがある——定義、換算、測定器、表記の規則。36 言語で。
圧力:単位とその理由
一つの量、十ほどの目盛SI 基本単位
キログラム、メートル、秒シートの言語
36 言語。記号 atm は国際的だが、使い慣れた目盛はそうではない。翻訳では表を現地の慣行に合わせている。