電子ボルト
SI 外の単位、使用が認められる · 量:エネルギー
01 · 定義
電子ボルトは加速器の研究室で生まれた。粒子のエネルギーをジュールで数えるのは、街と街の隔たりをマイクロメートルで測るのと同じくらい不便である。
一電子ボルトとは、電子が一ボルトの電位差を通り抜けて得るエネルギーである。定義はそのまま数になる。電子の電荷にボルトを掛ければ 1.602 176 634·10⁻¹⁹ ジュール——2019年からは正確な値である。素電荷がアンペアの定義で固められたからだ。この単位は小さな尺度の物理をすべて覆う。分子の結合エネルギーは数電子ボルト、X線の一量子は数十キロ電子ボルト、大型ハドロン衝突型加速器の陽子は七テラ電子ボルト。
光子のエネルギーを電子ボルトで表すには、1240 をナノメートル単位の波長で割ればよい。550 nm の緑の光は 2.25 eV、目に見えるものはすべて 1.65 と 3.26 eV のあいだに収まる。ひとつの数が、懐のプランク定数の代わりを務める。
02 · 換算
エネルギーを入れてください——カードが換算します
四つの尺度へ一度に、しかも手軽に翻る単位は電子ボルトだけである。エネルギー、温度、波長、質量。物理学者は四つを同じ意味の言葉として使う——「二電子ボルトの遷移」と「620ナノメートルの線」は同じことを述べている。
E = mc² を通じて、電子ボルトは質量の尺度にもなる。電子は 511 keV/c²、陽子は 938 MeV/c²、ヒッグス粒子は 125 GeV/c²。素粒子物理では c² で割ることは普通は省かれる。
| 単位 | 名称 | 値 | どこで出会うか |
|---|---|---|---|
| eV | 電子ボルト | 1 | 分子の結合、原子のスペクトル |
| meV | ミリ電子ボルト | 1000 | 格子の振動、熱雑音 |
| keV | キロ電子ボルト | 0.001 | X線、内殻 |
| MeV | メガ電子ボルト | 1·10⁻⁶ | 核の遷移、粒子の質量 |
| GeV | ギガ電子ボルト | 1·10⁻⁹ | 衝突型加速器、陽子の質量 |
| TeV | テラ電子ボルト | 1·10⁻¹² | 加速器の限界、宇宙線 |
同じ一行が四通りに読める。エネルギーとして、光子の波長として、温度 kT として、eV/c² の質量として。物理学者はそれらを同じ意味の言葉として用いる。
03 · 桁の並び
熱雑音から宇宙線まで化学結合と可視光
04 · 測定器
電子ボルトは何で測るか
放射線を量子のエネルギーごとに分け広げる。ゲルマニウム検出器はキロ電子ボルトの精度で線を見分ける。
ビームのエネルギーは、粒子が通り抜けた電圧の総和で決まる。単位の名はそこから来た。LHC は陽子を 7 TeV まで加速する。
光が叩き出した電子のエネルギーを測る。量子と運動エネルギーの差が、物質中の結合エネルギーを与える。
粒子を丸ごと飲み込み、放たれたエネルギーをギガ電子ボルトで測る。ヒッグス粒子は 125 GeV でこうして見つかった。
05 · 表記の規則
e は小文字、V は大文字、接頭語は両方の前に
記号は続けて書く。keV、MeV、GeV——接頭語は単位全体の前に立ち、文字のあいだには入らない。大文字の E ならエクサ、小文字の v なら何も意味しない。地の文では自国語の書き方も許されるが、式と表では羅字の記号が望ましい。
素粒子物理では c = 1 とする体系が用いられ、質量は光速の二乗で割らずに、ただ GeV と書かれる。この分野の外では c² を落としてはならない。eV と eV/c² は別の量である。
06 · 隣り合う単位
電子ボルトは三つのSI単位が出会う場に立つ。電子の電荷が係数を、ボルトが定義を、ジュールが結果を与える。プランクとボルツマンの定数を通せば、振動数と温度に換わる。
300 K では熱エネルギー kT は 25.9 meV である。この値が、電子工学と化学における熱の営みの尺度を定めている。
07 · 歴史の部
原子の尺度での隣人
CGS 系のエネルギー単位。原子の尺度には粗すぎた。電子ボルトはエルグの六千億分の一である。
水素の電離エネルギー、13.6 eV。原子のスペクトルは今もリュードベリと逆センチメートルで数えられる。
エネルギーの原子単位、リュードベリの二倍である。分子の計算はまさにこれで行われる——そうすれば式から定数がすべて消える。
物質一モルあたりの結合エネルギー。生化学と有機化学はこれを手放さず、物理学は電子ボルトへ移った。
2019年にジュールより正確になった、SI外の単位
SIの改定の前、電子ボルトはおおよその値であった。値は測られた電子の電荷に依り、新しい実験のたびに直された。2019年、素電荷は定義によって固められた——ちょうど 1.602 176 634·10⁻¹⁹ クーロン——そして電子ボルトからジュールへの換算係数は、不確かさのない正確な数になった。妙な事態が生まれた。SIがただ「使用を認める」にすぎないSI外の単位が、いまやジュールとまったく厳密に結ばれている。一方、体系の内側の多くの量は、限りある精度でしか測られていない。
カタログ · 測定単位
それぞれの量に一つの要覧
SI の基本単位が七つ、固有の名をもつ組立単位が二十二、そして技術にも暮らしにも欠かせないSI 以外の単位。どれにも一葉ずつ:定義、換算、測定器、表記の規則。36 言語で。
SI 以外の単位
電子ボルトのカードを開くSI 基本単位
赤褐色は電子ボルトの背後に立つもの固有の名をもつ SI 組立単位
二十二の一覧要覧の言語
36の言語。記号 eV と式は訳さない——どの言語でも同じである。訳されるのは地の文、例、そしてその文字ごとの書き方の決まりである。